1 規制の目的、内容及び必要性
- (1)規制の改正の必要性(現状及び問題点)
@ 地下貯蔵タンク等からの危険物の流出事故増加及びその対策の必要性について
近年、消防法(昭和23年法律第186号。以下「法」という。)上で定める危険物(石油等)を一定数量以上取り扱う施設(以下「危険物施設」という。)の流出事故件数は年々増加傾向にあり、平成20 年では386 件と高い水準となっている。当該事故の原因について、過去5年間では、腐食等劣化によるものが毎年最も多くなっており、平成20 年では全体の約40%を占めており、その内50%は、地下貯蔵タンク等からのものとなっている。また、地下貯蔵タンク等からの危険物の流出は、その構造上発見が遅れる可能性が高いことから被害の拡大が懸念される。
このような状況を踏まえ、平成19 年度、平成20 年度において、学識経験者、業界関係者、消防機関を交え、「既設の地下貯蔵タンク等の腐食の評価手法及び評価結果に応じた合理的な点検・保守管理手法の調査検討会」(委員長:松本洋一郎 東京大学大学院工学系研究科教授)が開催され、当該検討会において地下貯蔵タンク等の腐食の防止の合理的な点検・保守管理手法の検討が行われた。検討の結果、地下貯蔵タンクのうち、腐食のおそれが特に高いもの(主に設置年数が50 年以上、防食効果の低い外面保護、タンクの厚さが6.0mm 以下のタンク)について、FRP内面ライニング(※1)又は電気防食(※2)といった危険物の漏れを未然に防止する措置を、また、腐食のおそれが高いもの(主に設置年数が30 年以上、防食効果の低い外面保護、タンクの厚さが4.5mm 以下のタンク)について、FRP内面ライニング若しくは電気防食又は常時監視といった危険物の漏れを早期に検知するための措置のいずれかを講ずる必要があるとされた。
※1 FRP内面ライニング
埋設されたままの状況で内面全体に強化プラスチックを2mm 以上の厚さとなるよう被覆するもの。内面ライニングを実施することで、地下タンクの内部に滞留した水分による内面からのタンクの腐食を防止するとともに、外面からの腐食により金属部分に穴が開いたとしても危険物が地下タンクから外部に流出することを防止できる。
※2 電気防食
地下に埋設されたタンクへ外部から直流電流を流すことで腐食の進行を防止するもの。
A 地下貯蔵タンク等の漏れの点検義務の現状及びその義務の合理化の必要性について
地下貯蔵タンク、二重殻タンク(内殻と外殻の二重構造のタンク)の強化プラスチック製の外殻又は地下埋設配管については、一年に一回以上又は三年に一回以上漏れの点検を行わなければならないとされているところ(危険物の規制に関する規則(昭和34 年総理府令第55 号。)第62 条の5の2及び第62 条の5の3)、これらの中には、石油類の需給調整等の理由から一時的に危険物の貯蔵及び取扱いを休止しているものがあり、こうしたものについては、現に危険物の貯蔵及び取扱いがされないものであるから、危険物の保安確保の観点から支障がないと認められるものであれば、期間が緩和されても差し支えないものと考えられる。
B 強化プラスチック製二重殻タンクの内殻に用いる材質の現状及び問題点について
強化プラスチック製二重殻タンクはタンク本体すべてが強化プラスチックで造られていることから、貯蔵する危険物の種類によっては、タンクを劣化させるおそれがある。現在、強化プラスチック製二重殻タンクの内殻に用いる材質については、使用量の多いガソリン、灯油、軽油又は重油を貯蔵する場合のみ、その基準が整備されている。しかしながら、近年、バイオ燃料を始め、多様な危険物を強化プラスチック製二重殻タンクにおいて貯蔵したいといった要望があることから、貯蔵する危険物に応じて必要な材質の性能を規定する必要がある。
- (2)規制の改正の目的及び内容
【規制改正の目的】
@ 平成17 年4月1日より前に許可を受けて設置された地盤面下に直接埋設されている、腐食のおそれが高い一部の地下貯蔵タンクについて、危険物の漏れ防止対策を行うための技術上の基準を強化し、災害の発生及び被害の拡大を防止し、もって国民の生命身体及び財産並びに環境を災害から保護し、もって安寧秩序を保持し、社会公共の福祉の増進に資することを目的としている。
A 危険物の貯蔵及び取扱いを休止中の地下貯蔵タンク等について、危険物の保安の確保の観点から支障がないと認められるものについては、一部の義務の適用について緩和を認め、規制の合理化を図る。
B 強化プラスチック製二重殻タンクの内殻の材質について、ガソリン、灯油、軽油及び重油以外の危険物を貯蔵し、又は取り扱う場合の性能基準を整備し、規制の合理化を図る。
【規制改正の内容】
@ 地下貯蔵タンクのうち、腐食のおそれが特に高いものについては、内面ライニング又は電気防食をすることとし、腐食のおそれが高いものについては、これらの措置又は漏れを感知する常時監視装置を設置することとする。
A 地下貯蔵タンク、二重殻のタンクの強化プラスチック製の外殻又は地下埋設配管について、危険物の貯蔵及び取扱いが休止され、市町村長等が、保安上支障がないと認めた場合には、当該地下貯蔵タンク等に係る漏れの点検期間を延長することができること、市町村長等が延長期間を定めた場合には漏れ点検の記録の保存期間もこれに応じて延長されることを規定する。
B 強化プラスチック製二重殻タンクの内殻に用いる強化プラスチックが、貯蔵し、又は取り扱う危険物の種類に応じて、安全性を図る試験(耐薬品性試験)の基準に適合すれば、当該二重殻タンクで当該危険物の貯蔵及び取扱いを可能とするよう規定する。
2 規制の費用
- (1)遵守費用
@について、地下タンクの流出事故防止対策に係る以下の費用が発生する。
【新規費用】
○各タンクにかかる費用
常時監視装置を設置すると、漏れの点検(手数料50 千円)が設置より25 年間免除(1,250千円の負担減)されるため、全てのタンクに常時監視装置を設置するものとして試算した。
ア 腐食のおそれが特に高いタンク…1,600 千円《点検免除により差引き後 350 千円負担》
内訳・内面ライニング又は電気防食 1,100 千円・常時監視装置 500 千円
イ 腐食のおそれが高いタンク …500 千円《点検免除により差引き後 負担なし》
内訳・常時監視装置 500 千円
※ 腐食のおそれが高いタンクであっても内面ライニング又は電気防食を行っても差し支えない。
(参考)全国ベースでの費用
・腐食のおそれが特に高いタンク 約1,600 個
・腐食のおそれが高いタンク(常時監視装置) 約16,000 個
・腐食のおそれが高いタンク 約16,000 個
(内面ライニング又は電気防食並びに常時監視装置)
→小計 1,600 千円×1,600+500 千円×16,000+1,600 千円×16,000=36 億16 百万円
※これらの費用とは別に各施設につき、変更許可申請及び完成検査申請において各施設が所在する地方公共団体の手数料条例で定める金額の費用がかかる。
○各施設において変更許可申請及び完成検査に係る費用
・給油取扱所 約39 千円
・地下タンク貯蔵所 約20 千円
(参考)全国ベースでの費用
・給油取扱所 約5,000 箇所
・地下タンク貯蔵所 約10,000 箇所
→小計 39 千円×5,000+20 千円×10,000=3億95 百万円
※腐食のおそれの高いタンクから腐食のおそれの特に高いタンクに移行したものは、内面ライニング又は電気防食を施されなければならない。なお、変更許可申請及び完成検査審査において各施設が所在する地方公共団体の手数料条例で定める金額の費用がかかる。
【維持費用】
・常時監視装置(電気代) 1日あたり約42 円(年間約15,330 円)
・電気防食(電気代) 1日あたり約52.8 円(年間約19,272 円)
A及びBについては、漏れ点検義務の緩和等を内容とするものであり、特段の費用が発生するものではない。
- (2)行政費用
@について、各施設において変更許可及び完成検査に係る費用が発生する。なお、これらの費用は各地方公共団体の条例に定めるところにより別途施設の所有者等から手数料として徴収する。
例 ・給油取扱所 約39 千円
・地下タンク貯蔵所 約20 千円
(参考)全国ベースでの費用
・給油取扱所 約5,000 箇所
・地下タンク貯蔵所 約10,000 箇所
→小計 39 千円×5,000+20 千円×10,000=3億95 百万円
A及びBの改正に伴う行政機関に係るコストについては、今回の改正によって特段増加しない。
3 規制の便益
- (1)遵守便益
@ 今回の改正により危険物の漏れが防止されることで、災害時の生命及び身体に対する損害の拡大が最小限に抑えられることとなる。また、危険物の流出事故の発生により、施設の改修費用や休業期間中の営業補償費として、現在年間15 件程度の事故で約675,000 千円の損害(1件あたり損害額約45,000 千円)が生じているが、そういった財産上の損害の拡大も最小限に抑えられる。さらに、流出事故が環境に与える悪影響も抑えることができる。
A 市町村長等が、保安上支障がないと認めた休止中の地下タンク貯蔵所等について、休止期間中の漏れ点検に要する手数料が不要になる。
B ガソリン等のあらかじめ決められた危険物しか貯蔵及び取り扱えなかった強化プラスチック製二重殻タンクにおいて、例えばバイオ燃料等の新エネルギーも貯蔵することが可能となる。
- (2)行政便益
@ 地下貯蔵タンク等からの漏れを防止する又は早期に検知することができるため、発生及び被害の拡大の防止が期待できるため、災害発生時の消防機関の活動の負担が相当程度軽減される。
A 市町村長等が、保安上支障がないと認めた休止中の地下タンク貯蔵所等について、休止期間中の漏れ点検に係るコストが不要になる。
Bについて、行政上の便益は特にない。
4 政策評価の結果(費用と便益の関係の分析等)
@ 今回の改正により、年々増加する地下貯蔵タンクからの流出事故の発生及び被害拡大を防止することが出来る。また常時監視装置を設置した場合、個々の所有者等にとっては、25 年間漏れ点検の義務が免除されるため、一定程度の費用を抑えることができる。また、数値化が難しい指標として、危険物の流出事故により環境に与える悪影響を抑えることができる。さらに、危険物を取り扱う施設等の危険性を踏まえると、施設に応じた技術上の基準を満たすことは人命確保や財産を保護するために求められることであり、当該目的の達成のために危険物施設等の所有者等がその施設に応じた技術上の基準を満たすことは法で求められているところである。
以上のことを勘案すると、便益は費用に見合ったものであり、かつ、危険物施設等の所有者等がその費用を負担することについては、合理性があると考えられる。
A 保安上の支障がないと認められ、漏れ点検の延長が行われれば、当該所有者等に課せられる義務の軽減が合理的に図られると見込まれる。
B 多様な危険物を強化プラスチック製二重殻タンクにおいて貯蔵できるようになるため、所有者等にとって利便性が向上すると考えられる。
以上の分析から、改正省令案による規制の改正は適切なものであると考えられる。
5 有識者の見解その他関連事項
消防庁では平成20 年9月から地下貯蔵タンクにおける流出事故対策について検討する「既設の地下貯蔵タンク等の腐食の評価手法及び評価結果に応じた合理的な点検・保守管理手法の調査検討会」(委員長:松本洋一郎 東京大学大学院工学系研究科教授)を開催し、同検討会において、腐食の評価手法及びその評価結果に応じた合理的な流出事故防止対策等について検討され、「既設の地下貯蔵タンク等の腐食の評価手法及び評価結果に応じた合理的な点検・保守管理手法の調査検討報告書」(平成21 年3月)が取りまとめられている。
6 レビューを行う時期又は条件
今後の社会情勢及び科学の進展による新たな技術を踏まえつつ、必要があると認めるときは、レビューを行うものとする。
地下タンク診断
地下貯蔵タンクの流出事故防止対策に係る事項
腐食の恐れが特に高い地下貯蔵タンク等の要件
FRPライニング工事について
- (1)FRPタンクライニングとは
「鐵」は構造材として、強度、靭性、経済性を有しており、加工性に優れている事から、剛性を高めることも自由自在に出来る優れた素材と言えます。
しかし、「鐵」の弱点は使用環境による酸化作用(腐食)により、素材自身の強度を低下させてしまうことです。場合によっては集中腐食の発生により鋼板を貫通させ漏洩する事態を発生させます。
タンクFRPライニングは、地下タンク素材「鐵」のもつ優位性を継続させ、腐食という弱点を補うために、FRP(Fiber Reinforced Plastics)ガラス繊維強化プラスチックを内面に積層施工いたします。
「鐵+FRP」の複合材料で、双方の利点を活用した工法です。
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- (2)安全・安心さらに経済性を重視
環境にやさしいFRP内面ライニング工法
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FRPライニング工事の詳細は 東洋ケミカル機工株式会社HPへ